探偵はマンションの共用部に入ってよい?張り込みと住居侵入の線引き

探偵の張り込みそのものは、違法ではありません。ただ、マンションやアパートの共用部に、管理する人の意思に反して入ると、住居侵入の罪に問われることがあります(刑法130条)。
共用部とは、エントランスの内側・廊下・階段などのことです。刑法130条で「邸宅」などとして守られる場所です。
探偵業の届出をしていても、他人の建物に入る特別な権限はありません(探偵業法6条)。
総合調査 紫苑は、張り込みや尾行の調査では、オートロックのあるなしにかかわらず、基本的に共用部には入りません。
2026年2月、帯広市の共同住宅で、探偵業の2人が、共用部の通路に正当な理由なく入った疑い(邸宅侵入の疑い)で逮捕されたと報じられました。その後、このうち1人は、共同住宅の通路に侵入した罪で略式起訴され、罰金10万円の略式命令を受けたと報じられています(2026年9月30日・10月1日の報道)。もう1人がどう扱われたかは、当社では確認できていません。
帯広市で報じられた「邸宅侵入の疑い」

この件で報じられていて、この記事に関わるのは次のことです。
- 2026年2月、帯広市の共同住宅で、探偵業の2人が逮捕されたと報じられたこと。共用部の通路に正当な理由なく入った疑い(邸宅侵入の疑い)です
- きっかけは、住んでいる方が共用部でカメラに気づき、通報したことだと報じられたこと
その後、2人のうち1人は、共同住宅の通路に侵入した罪で略式起訴され、罰金10万円の略式命令を受けたと報じられています(2026年9月30日・10月1日の報道)。報道は、この1人について、カメラを設置するために入ったと伝えています。実際にだれがカメラを付けたのか、もう1人がどう扱われたのかは、当社では確認できていません。
同じ年の9月には、この件の捜査をきっかけに、別の事件が明らかになったとも報じられました。そちらは前の記事に書いています。

この記事で扱うのは、事件そのものではありません。探偵が共用部に入ること、張り込み、カメラの設置が、法律でどう扱われるのかを整理します。
この記事は、2026年10月5日時点で確認できた報道と法令にもとづいて書いています。
出典:2026年2月の北海道ニュースUHB・HBC北海道放送・HTB北海道ニュースの報道(配信は終了しています)、2026年9月30日の北海道ニュースUHBの報道、2026年10月1日のHTB北海道ニュースの報道
探偵はマンションの共用部に入ってよい? 線を引くのは「管理する人の意思」

共用部は、刑法130条で守られている場所です
刑法130条は、次のように定めています。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
「正当な理由」があるかどうかは、事案ごとに判断されます。
お部屋の中は「住居」、廊下や階段などの共用部は「邸宅」(建物によっては「住居」の一部)として、どちらもこの条文で守られます。ふだんの言葉では、まとめて「住居侵入」と呼ばれることが多いので、この記事でも両方の言葉を使います。
裁判所はどう判断したか(最高裁の判例)
最高裁判所の平成20年4月11日の判決は、公務員宿舎の事件でした。1階の出入口から各室の玄関前までの部分と、その敷地が、邸宅侵入罪の対象になると判断しています。
この判決は、「侵入」とは、管理する人の意思に反して立ち入ることだ、とも示しました。
民間の分譲マンションの共用部分についても、管理組合の意思に反して立ち入ったことが刑法130条の罪にあたる、とした判決があります(最高裁 平成21年11月30日)。
ただし、どちらも個別の事件についての判断です。ふつうの賃貸のアパートやマンションに、そのまま当てはまるとは限りません。共用部に入れば、いつでも罪になるというわけではありません。
探偵業の届出は、建物に入る権限ではありません
探偵業法6条は、探偵業の届出をしていても、ほかの法令で禁じられていることができるようになるわけではない、と定めています。他人の建物に入る特別な権限もありません。
探偵業務に関してほかの法令に違反すれば、公安委員会の指示や営業停止などの処分の対象にもなりえます(探偵業法14条・15条)。
入ってよいかどうかは、鍵の有無ではなく、管理する人が認めているかどうかが分かれ目になります。
出典:刑法の条文を見る(e-Gov)/最高裁 平成20年4月11日の判決を見る(裁判所)/最高裁 平成21年11月30日の判決を見る(裁判所)/探偵業法の条文を見る(e-Gov)
探偵の張り込みは違法? 住居侵入(邸宅侵入)が問題になる場面
張り込みそのものは、違法ではありません
探偵業法2条1項は、探偵の仕事を、聞き込み・尾行・張り込みなどの方法で実地に調べ、その結果を依頼者に報告するものとしています。張り込みは、法律が探偵の仕事として定めている方法の一つです。
ただ、張り込みという名前が付けば何でも許される、という意味ではありません。
問題になるのは、どこから・どうやって確かめるか
分かれ目は、調査員がどこにいて、何をするかです。大まかに分けると、次のようになります。
- 公道など、だれでも通れる場所から確かめる
- 立ち入りが認められている場所で確かめる
- 外から見えるものを、外から記録する
- 管理する人の意思に反して、敷地や共用部に入る
- 出るように言われても、立ち去らない
- 家の中をのぞく・写す
- 相手の敷地や建物に、無断で物を付ける
「法律に触れるおそれがあること」の上の2つは、住居侵入・邸宅侵入(刑法130条)が問題になる場面です。どれに当たるかは、個々の事情で判断されます。
共用部にある集合ポストの中身に手を出すことも、罪に問われることがあります。探偵の業務として、マンションの集合ポストから書面を取り出し、撮影したあとに戻した行為について、窃盗罪の成立を認めた判決があります(京都地方裁判所 令和7年3月11日判決)。
張り込みが長くなると、通報されることもあります
家の近くに見慣れない人や車が長くいれば、住んでいる方が不審に思うのは当然です。通報を受けて、警察の方が確かめに来る場合もあります。
通報されたからといって、その調査が違法だったとは限りません。通報のきっかけは、住んでいる方の不安であることもあります。
警察の方から声をかけられたときの当社の受け答えは、あとの「管理会社や大家さん、警察の方に聞かれたら」に書きました。
探偵がカメラを設置するのは違法? 問題になる3つの点
カメラを置くことそのものを、まとめて禁じる1つの法律があるわけではありません。先に問題になるのは、次の3つです。
- 付けるために、他人の敷地や建物に入ること
カメラを付けるには、その場所まで行くことになります。管理する人の意思に反して敷地や共用部に入れば、前の章で見た刑法130条が問題になります。 - 管理する人の許しなく、共用部に物を付けること
共用部は、管理会社・管理組合・大家さんが管理している場所です。そこに物を付けるには、管理する人の許しが要ります。 - 写る人のプライバシー
家の中や、人が見られたくない場面を写せば、損害賠償の責任を問われるおそれがあります(民法709条・不法行為)。
のぞき見については、軽犯罪法1条23号が、人の住居や浴場、更衣場、便所など、人がふつう衣服を着けないでいるような場所を、正当な理由なくひそかにのぞき見ることを禁じています。
カメラを置いたことがどの法律に触れるのかは、場所・写したもの・目的によって変わります。個別の判断は、弁護士の先生にご相談ください。
出典:民法の条文を見る(e-Gov)/軽犯罪法の条文を見る(e-Gov)
「共用部に入ってでも撮ってほしい」と言われたとき

そう頼まれることは、実際にあります
相手の方がアパートやマンションにお住まいのご相談では、「共用部に入ってでも撮ってほしい」と言われる場面があります。「玄関の前までなら大丈夫でしょう」というお言葉も、実際に伺っています。
建物のどのお部屋かまで確かめたい、というご希望から出るお話です。
当社のお答え
当社では、「それはできないことです。違法なことになりますので、もう一度お考えになっていただけますか」とお断りしています。法律に触れるおそれがあるためです(探偵業法6条)。
「オートロックのマンションは、建物の中に入らず、外から確かめることになります」と、前もってお伝えしています。できないことを先にお話ししたうえで、外から確かめる調査をご案内します。
ご相談の際に目的を伺い、相手の方へのつきまといや嫌がらせにつながるおそれがあるときは、お受けできません。
頼んだ方が巻き込まれないために
違法と知って頼むと、事案によってはご依頼者も責任を問われることがあります。くわしくは前の記事に書きました。

また、違法な方法で集めたものは、裁判で証拠として認められないことがあります。
「こういう調査は頼めるのだろうか」という段階のご相談も承っています。
総合調査 紫苑のやり方:張り込みでは共用部に基本的に入らず、外から確かめます

入らなくても確かめられることがあります
当社は、張り込みや尾行の調査では、オートロックのあるなしにかかわらず、基本的に共用部には入りません。入らなくても確かめられることがあるためです。確かめ方は、調査の手法に関わるので、ここには書けません。
外から確かめるので、分かることには限りがあります。お部屋の中のことは分かりません。確かめられないこともあります。
張り込みでいちばん大変なのは、寒さです。札幌の冬は、雪が積もって車を停められない日があります。急に冷え込んだ日の張り込みは、非常に大変です。
カメラを使うとき
調査でカメラを使うこともあります。管理する方やお住まいの方の了承なく、相手の方の敷地や建物の中に置くことはしていません。人の家の中をのぞくような写し方もしません。どこから撮影するかは、その案件と調査の場所ごとに決めています。
管理会社や大家さん、警察の方に聞かれたら
やむを得ないとき、きちんと理由があるときには、ご依頼者様や相手の方のことは伏せたうえで、管理会社や大家さんにお話しする場合もあります。
警察の方から声をかけられたときは、身分と、調査中であることをお話ししています。ご依頼者様のお名前や調査の内容は、業務で知った秘密にあたるため(探偵業法10条)、その場でこちらからお話しすることは控えています。法令にもとづく照会や手続があったときは、それに従って対応します。

住んでいる方へ:マンションで見慣れないカメラに気づいたら

マンションやアパートの共用部には、管理会社や管理組合が付けた防犯カメラもあります。見慣れないものに気づいても、まずは落ち着いて確かめてください。
まず、触らずに管理会社と警察へ
当社でも、こうしたご相談をいただいたときは、「まず管理会社と警察へ」とお伝えしています。触らずに、管理会社と警察へ。順番は次のとおりです。
- 触らない・動かさない
- 気づいた日時と場所を書きとめる(写真は、離れた所から全体が分かるように)
- 管理会社・大家さん(分譲なら管理組合)に、建物で付けたものかを聞く
- 建物で付けたものでなければ、警察に相談する
- 急ぐとき・不審な人がいるときは110番、相談は警察相談専用電話「#9110」
ご自分で外したり、壊したりしない
見つけたものを、ご自分で外したり、壊したりしないでください。だれかの持ち物ですので、壊したり持ち去ったりすると、逆に責任を問われるおそれがあります(刑法261条の器物損壊など)。
そのままにしておけば、あとで警察が確かめるときの手がかりにもなります。写真をネットに上げることや、ご自分で持ち主を探すこともおすすめしません。
「触らない」は、警察の公式の案内ではなく、当社の考え方としてお伝えしているものです。
お部屋の中や身の回りも確かめたいとき
共用部にあるものは、建物を管理する方と警察にお任せください。当社がお手伝いできるのは、ご自分のお部屋・お車・お荷物です。
当社では、盗聴器・盗撮器の発見調査をお受けしています。これまでに、ご依頼者様ご自身の郵便受けの中から見つかったことがあります。警察への状況説明のお手伝いもしています。
調べても、何も見つからない場合もあります。それも含めて、確かめるための一つの方法としてお考えください。

よくある質問
まとめ:調査の前に、どこから・どう確かめるのかを聞いてみてください
- 張り込みそのものは、違法ではない
- 共用部に入ってよいかは、管理する人が認めているかどうかが分かれ目になる。探偵業の届出があっても、特別な権限はない
- 見慣れないカメラに気づいたら、触らずに管理会社と警察へ
総合調査 紫苑では、電話・LINE・メールでご相談を伺っています。どのような調査になるのか、できること・できないことを先にご説明します。
お話を伺ったうえで、ご依頼にならなくても構いません。ご相談は無料です。お話しになりやすいところからで構いません。




