子の連れ去りと共同親権|違法になりうる場合と防止のために今できること

2026年(令和8年)4月1日から共同親権が始まり、離婚したあとも父母の両方を親権者にできるようになりました(民法819条)。子の連れ去りが心配なときに前もってできるのは、早めに弁護士や司法書士の先生に相談し、家庭裁判所の手続を使うことです。
父母の両方が親権者のときに、正当な理由なく相手に無断で子の住まいを変えると、親権者を決めるときに考慮されることがあります。力ずくで子を連れて行けば、親であっても未成年者略取罪(刑法224条)に当たりうる、というのが改正の前からの考え方です。
ただし、DVや虐待から子と避難するための転居は「急迫の事情」として、父母の一方だけでできるとされています(法務省の民法改正Q&A)。避難した方が責められるものではありません。
後半では、札幌の探偵事務所・総合調査 紫苑の経験もお伝えします。弁護士や司法書士の先生からのご紹介でお受けした「連れて行かれる前」の現場の話と、探偵にはできないことです。
共同親権で何が変わった?(2026年4月1日から)

民法などを改めた法律(令和6年法律第33号)が、2026年4月1日に施行されました。子どもにかかわる大きな変更は、次の3つです。
離婚後も、父母の両方を親権者にできる
これまでは、離婚すると父か母のどちらか一方だけが親権者になりました。今は、父母の「両方」か「一方」かを選べます。
- 協議離婚:父母の話し合いで決める(民法819条1項)
- 裁判離婚:裁判所が決める(同2項)
- 話し合いがまとまらないとき:家庭裁判所が審判で決める(同5項)
父母の両方が親権者になった場合、親権は原則として共同で行います(民法824条の2。次の節で詳しく見ます)。
DV・虐待のおそれがあれば、裁判所は単独親権にする
裁判所は、次のようなときは、父母の一方だけを親権者と定めなければなりません(民法819条7項)。
- 父または母が、子の心身に害を及ぼすおそれがあるとき
- 一方が他方から暴力などを受けるおそれや、話し合いがまとまらない理由などから、共同で親権を行うのが難しいとき
この2つは、例として挙げられたものです。当てはまらなくても、両方を親権者にすると子の利益を害するときは、裁判所は一方だけを親権者と定めなければなりません(民法819条7項・法務省のQ&A)。
父母は、互いに人格を尊重し協力する
新しくできた民法817条の12 第2項は、子の利益のために、父母が互いを尊重し協力するよう求めています。結婚しているかどうかは問いません。この決まりが、あとで見る「子を連れての別居」の考え方にかかわってきます。
共同親権のもとで「ひとりで決められること・決められないこと」

- 原則は、父母が共同で決める子の大事なことは、2人で決めるのが基本です。子の住まいを変えること(DV・虐待からの避難を除く)など、日常の行為に当たらないことが入ります。
- 一方だけでできる:急迫の事情があるときDV・虐待からの避難、緊急の医療、入学手続の期限が迫っているときなど
- 一方だけでできる:日常の行為日々の生活の中のことで、子に重大な影響を与えないもの
- 一方だけでできる:家庭裁判所が定めたこと一方だけで決めてよいと、家庭裁判所が定めた事柄
- 話し合いがまとまらないとき家庭裁判所に申し立てられます(民法824条の2)
原則は、父母が共同で決める
民法824条の2 第1項は「親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。」と定めています。父母の両方が親権者なら、子の大事なことは2人で決めるのが基本です。
結婚している父母も、離婚後に両方が親権者になった父母も、このルールで親権を行います。
一方だけでできること① 子の利益のため急迫の事情があるとき
話し合いや家庭裁判所の手続を待っていては間に合わず、子の利益を害するおそれがある場合です(824条の2 第1項3号。意味は法務省のQ&Aによる)。例として、次のようなものが挙げられています。
- DVや虐待からの避難(子の転居を含む)
- 緊急の医療
- 入学手続の期限が迫っているとき
被害を受けた直後に限らず、急迫の事情が続いている状態も含まれることがあります。
一方だけでできること② 日々の生活の中の「日常の行為」
「監護及び教育に関する日常の行為」(子の世話やしつけ、教育の中の日々のこと)も、一方だけでできます(同2項)。日々の生活の中で生じ、子に重大な影響を与えないものを指します。
一方で、子の転居は、基本的に日常の行為には当たらないとされています。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所が決める
ある事柄について父母の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に申し立てられます。家庭裁判所は、その事柄を一方だけで決めてよいと定めることができます(同3項)。
別居のときに子を連れて出るのは違法?

子を連れて別居したことだけで、ただちに違法とされるわけではありません。別居の理由と、連れて出た方法によって扱いが変わります。
DV・虐待から避難するための転居は、義務違反にならない
DVや虐待からの避難のような急迫の事情があれば、子を連れて転居すること自体は、817条の12の義務違反にならないとされています(法務省のQ&A)。身体への暴力に限りません。DVや虐待をした親に、できない協力を強いるものでもありません。
正当な理由のない無断の転居は、親権者を決めるときに考慮されうる
法務省のQ&Aは、義務違反となりうる例も挙げています。父母の両方が親権者のときに、一方が正当な理由なく、他方に無断で子の住まいを変えることです。違反があると、親権者の指定や変更の場面で考慮される可能性があります。
判断の材料になるのは、たとえば次のような事情です。
- 別居した動機と、そこに至る経緯
- 別居の前後に、どんな話し合いがあったか
- 子の年齢と、子自身の意向
- それまでの親子の関係
連れて出たらそれだけで不利になる、という書き方はされていません。事情を一つずつ見て判断されます。
力ずくの連れ去りは、親でも罪に問われうる
刑法224条は「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。」と定めています。親だからといって、この罪から外れるわけではありません。
最高裁判所の平成17年12月6日の決定に、この罪の成立を認めた例があります。別居中の父が、母のもとで暮らす2歳の子を力ずくで連れて行った件です。父母が結婚していて、2人とも親権者だった改正前の事案です。
出典:刑法224条(e-Gov 法令検索)/最高裁判所 平成17年12月6日 第二小法廷決定(裁判所のサイト)
| 場面 | 法律上の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| DV・虐待からの避難 | 一方だけでできる。義務違反にならない | 民法824条の2・法務省Q&A |
| 正当な理由のない無断の転居(両方が親権者のとき) | 親権者を決めるときに考慮されうる | 民法817条の12・法務省Q&A |
| 力ずくの連れ去り | 未成年者略取罪に当たりうる | 刑法224条 |
ご自分の場合にどう扱われるかは、事情によって変わります。個別の判断は、弁護士の先生にお尋ねください。
探偵の現場から見た「連れて行かれる前」

子を連れて行かれるおそれがある側からの張込みのご依頼は、弁護士や司法書士の先生が事情を伺ったうえでご紹介くださった件に限りお受けします。お受けするのは、その日その場の様子を確かめて記録に残すところまでです。
連れて出た先(行き先・居場所)を突き止めて、ご依頼者様にお伝えする調査はしていません。DVや虐待から避難しようとしている方を追いかける調査や、避難先を探す調査もお受けしません。
ここからは、総合調査 紫苑がこれまでに経験したことです。ご依頼者様やご家族が分からないよう、時期や地域は伏せています。
弁護士や司法書士の先生からのご紹介で、お受けしたご依頼
当社がお受けしたのは、子を連れて行かれるおそれがある側からのご依頼でした。たいていは、すでに弁護士の先生が関わっていました。ご紹介は、弁護士の先生からも、司法書士の先生からもありました。
弁護士の先生のご判断のうえで、ご依頼者様がその場にいられない日にお受けしたご依頼が多くありました。
連れて行かれるおそれが高いと伺った日に、現場に入った
弁護士の先生から、連れて行かれるおそれが高い日を伺いました。当時は、その日に合わせて張込みと尾行をしました。
現場では、親子の様子と動きを確かめていました。調査のやり方の詳しいことは、ここでは控えます。
見たことは記録に残し、ご依頼者様と先生に伝えた
動きがあったときは、まずご依頼者様に連絡し、次に弁護士の先生にお知らせしました。現場で見たことは、記録に残しました。
探偵には、連れて行くのを止める手だてがない
現場にいても、探偵が間に入ることはできません。当社の案内で、ご依頼者様から警察に連絡していただいたこともあります。そのときは当人どうしのやりとりとして扱われ、警察がその場で止めることはありませんでした。
タッチの差で、子が連れて行かれてしまったこともありました。
連れて行かれたあと、記録が先生の次の手の材料になった
当時は、まだ共同親権が始まる前でした。連れて行かれてしまったあと、弁護士の先生が相手方の弁護士に連絡を取るなど、手を打たれた件もありました。
そのとき当社は、記録をもとに、その場の実際の状況を先生にお伝えできました。探偵の調査で役に立てたのは、この部分です。
お断りしたご依頼もある
ご予算が合わなかったときや、遠方で当社と日程が合わなかったときは、お断りしました。
現場に入って分かったこと
- その場で止めることはできなかった
- 役に立てたのは、その場の様子の記録だった
- 調査をしても、結果はお約束できない
連れて行かれるのを防ぐことは、探偵の調査だけではできません。前もってできることを、次にまとめます。
子供の連れ去りを防止するために、前もってできること

- 連れて行かれそうで心配弁護士や司法書士の先生に相談する → 家庭裁判所(監護者の指定・保全処分)
- 連れて行かれてしまったまず弁護士の先生に連絡(自分で連れ戻さない)→ 家庭裁判所(子の引渡し・監護者の指定・保全処分)
- DV・虐待から避難する配偶者暴力相談支援センター(DV相談ナビ #8008)・警察 → 保護命令・住民票の閲覧制限
※暴力を伴うときや身の危険があるときは、先に110番してください。
頼りになるのは、法律の手続です。あわせて、ご自分の側の振る舞いも整えておきます。
できるだけ早く、同じような件の経験のある弁護士や司法書士の先生に相談する
不安を感じたら、できるだけ早く、同じような件を扱った経験のある弁護士や司法書士の先生にご相談ください。家庭裁判所の手続を代わりに行うこと(代理)や、相手方との交渉は、弁護士の先生のお仕事です。
その場にいられない日は、先生を通して探偵に記録を頼む
お仕事を休めない日や、お子さんと一緒にいられない日に不安があるときは、まず先生にそのことを伝えてください。先生が事情を伺ったうえでご紹介くださった件に限り、当社がその日その場の様子を確かめ、記録に残すことができます。探偵がその場で止めることはできませんが、記録は、先生が次の手を打つときの材料になることがあります。DVや虐待から避難しようとしている方を追いかける調査や、連れて出た先を調べる調査は、お受けしていません。
家庭裁判所で、監護者の指定や保全処分を求める
家庭裁判所には、監護者(子と暮らして世話をする親)を決める手続などがあります。
- 監護者の指定など、子の監護に関する処分について、保全処分を求められます(家事事件手続法157条1項3号)
- 改正で、子の住まいなど特定の事柄を父母の一方だけで決めてよいと、家庭裁判所が定める手続ができました(民法824条の2 第3項)。この手続についても、保全処分を求められるようになりました(家事事件手続法175条)
保全処分は、審判が出るのを待つあいだの、仮の手当てを求める手続です。どれが合うかは、先生と相談して決めます。
ご自分からも、話し合いなしに子の住まいを変えない
互いに尊重し協力する義務(817条の12)は、両方の親にかかります。両方が親権者のときに、不安だからと正当な理由なく先に子を連れて出ると、ご自分の側が考慮の対象になることがあります。DVや虐待からの避難は別です。
話し合いの経過を残しておく
両方が親権者のときに子の住まいが問題になると、別居の前後にどんな話し合いがあったかも見られます(法務省のQ&A)。いつ、何を話し、どんな返事があったかを、メールやメモで残しておきましょう。先生に相談するときにも、経過を伝えやすくなります。
連れて行かれるのではと不安なときや、何から始めればよいか分からないときは、今の状況をそのままお聞かせください。お話を伺い、必要に応じて弁護士や司法書士の先生をご紹介します。
連れて行かれてしまったら

子を連れて行かれてしまったら、どうしようと悩む前に、まず弁護士の先生に連絡してください。何より先にしていただきたいのが、この連絡です。ただし、暴力を伴うときや身の危険があるときは、先に110番してください。
現場に立ってきた当社から、お伝えしたいこと
法律の判断ではなく、これまで現場で見てきたことから考えた、行動の順番です。
- まず弁護士の先生に連絡する
- 自分で連れ戻そうとしない
- 家庭裁判所の手続は先生に任せる
- 前もって、できる備えをしておく
※暴力を伴うときや身の危険があるときは、先に110番を。
1 まず弁護士の先生に連絡する
子の引渡しなどの件を扱ったことのある弁護士の先生に、起きた事実をそのまま話してください。どの手続を使うか、どれくらい急ぐかは、先生が事情を伺って考えます。
2 自分で連れ戻そうとしない
取り戻したいと思うのは当然の気持ちです。それでも力ずくで連れ戻すと、ご自分が未成年者略取罪に問われるおそれがあります(刑法224条)。法律の手続によらず、自分の力で取り戻すこと(自力救済)は、原則として認められていません。
3 家庭裁判所の手続は先生に任せる
基本は、家庭裁判所の調停や審判で「子の引渡し」「監護者の指定」を求めます。急ぐときは、保全処分をあわせて申し立てることもあります。
申立てを代わりに行うこと(代理)は、弁護士の先生にお願いします。申立てはご本人でもでき、申立書の作成は司法書士の先生にもお願いできます。それでも、当社がいちばん大事だと考えるのは、子の引渡しなどの件を扱った経験のある弁護士の先生にお願いすることです。
4 前もって、できる備えをしておく
連れて行かれるおそれを感じた段階で、先生への相談や話し合いの記録など、できる備えを進めておきます。中身は、前の節「子供の連れ去りを防止するために、前もってできること」に書いています。
暴力を伴うときは、警察に相談する
連れて行くやり方が乱暴なときや暴力を伴うときは、刑事事件になりえます。身の危険を感じたら、ためらわずに110番してください。
相手の方が、DVや虐待から避難して家を出たとき
相手の方がDVや虐待から避難するために子と家を出た場合は、法律上認められた転居であることがあります。居場所を探したり、押しかけたりせず、弁護士の先生にご相談ください。当社も、居場所を探すご依頼はお受けしていません。
ほかの手続① 人身保護請求
人身保護請求という手続もあります。ただ、最高裁判所の判例で、子を手元に置いていることに「顕著な違法性」があることが要るとされ、使える場面は限られます。原則として、弁護士の先生が代理人になって行う手続です。
ほかの手続② 国をまたぐとき(ハーグ条約)
子が16歳未満で、相手の国もハーグ条約を結んでいる国(締約国)であれば、条約の仕組みで子の返還を求める道があります。日本では2014年4月1日に発効し、外務省が窓口です。
DV・虐待から子と避難している方へ

この記事を読んで、ご自分が責められているように感じた方がいたら、そうではありません。
DVや虐待から子と避難することは、一方の親だけでできる「急迫の事情」に当たるとされています(民法824条の2 第1項3号)。
当社は、避難している方の居場所を探すご依頼はお受けしていません。
身を守るための仕組み
- 住民票の閲覧制限(DV等支援措置):住民票のある市区町村に申し出て、必要と認められると、相手からの住民票の写しなどの請求が制限されます。期間はおおむね1年で、延長もできます
- 保護命令を申し立てられる場合:2024年(令和6年)4月1日施行の配偶者暴力防止法の改正で、身体への暴力や生命・身体への脅迫に加え、自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫を受けた場合も申し立てられるようになりました。命令が出る要件も、生命や身体だけでなく「心身」に重大な害を受けるおそれが大きいときに広がりました
- 保護命令の期間と中身:同じ改正で、接近禁止命令の期間は6か月から1年に延びました。子への電話などを禁じる命令もできました
相談できる窓口
| 窓口 | 電話 | 受付 |
|---|---|---|
| DV相談ナビ | #8008 | 各センターの時間内 |
| DV相談+(プラス) | 0120-279-889 | 24時間・無料 |
| 北海道 女性相談支援センター | 011-666-9955 | 年末年始を除く毎日(時間帯あり) |
| 札幌市配偶者暴力相談センター | 011-728-1234 | 毎日(時間帯あり) |
| 北海道 男性被害者の相談窓口 | 011-661-3210 | 平日 9〜17時(祝日・年末年始を除く) |
受付時間:北海道 女性相談支援センターは平日9:00〜17:00(DVの相談は平日18:00〜20:00、土日祝9:00〜18:00も)。12月29日〜1月3日はお休みです。札幌市配偶者暴力相談センターは平日8:45〜20:00、土日祝11:00〜17:00(年末年始を除く)。
身の危険があるときは、110番してください。
よくある質問
ひとりで抱え込まずに、まずはご相談ください
この記事のポイントは、次の4つです。
- 2026年4月1日から、離婚後も父母の両方が親権者になれる。両方が親権者なら、子の住まいなど大事なことは原則として共同で決める
- DVや虐待からの避難は「急迫の事情」として一方だけでできる。避難した方が責められるものではない
- 連れて行かれてしまったら、悩む前にまず弁護士の先生に連絡する。自分で連れ戻さず、家庭裁判所の手続は先生に任せる
- 探偵がその場で連れて行くのを止めることはできない。当社がお受けする張込みは、先生のご紹介がある件で、その日その場の様子を記録するところまで
総合調査 紫苑では、電話・LINE・メールでご相談を伺っています。お話を伺い、必要に応じて弁護士や司法書士の先生をご紹介します。ご依頼者様からも先生からも、紹介料はいただきません。
子の引渡しや監護者の指定などの手続は、先生と一緒に進めていくことになります。当社は、子を連れ戻す・連れ去る手伝いはしません。子を連れて家を出た相手の方や、子の居場所を探すご依頼も、お受けしていません。
ご相談は無料です。お話しになりたいところからで構いません。




